田中泯『私の存在の粒子的部分のすべてがダンスです』

「私は地を這う前衛である」
20年程前に師である故・土方 巽(ひじかたたつみ)へのオマージュの中で書いた。今もこの精神は私の本質である。
近年では、『私は地を這う農民でもある』と付け加えたいと思っている。
ところで、アメリカのダンス・アバンギャルドの母アナ・ハルプリンは『ダンスとは まずはじめに人生の方法である』といった。
ダンスも人生も私には、わかっているわけではないのだが、私は踊ることで言葉を奪 い返した。
踊ることで、世の中が、制度が、見えてきた。
踊ることで、人にあこがれた。
踊ることで、もっと生きたいと思った・・・・・・。
私は古代からのダンサーの正当な嫡子であろうと思うのです。
ダンサーとは本来、無名の力であり、場所のメディアであった。私もそうありたい、 と欲するのです。
『私の存在の粒子的部分のすべてがダンスです』と言いたい気分なのです。
私自身を例題としてあらゆる瞬間、
場所にミクロマクロのダンスを見届けようとする試みが
私、「田中 泯」というヒトの「職業」なのかも知れません。

田中泯